第4回N-Pネットワーク研究会

2015年10月9日(金)@ ホテル横浜キャメロットジャパン

「BPSDに薬剤治療が奏効した一例」

せやクリニック副院長 川口千佳子先生

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認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)には不安、易刺激性、焦燥・興奮、妄想、幻覚などがあり、疾患に起因する遺伝的要因や神経生物的要因に心理学的要因や環境的要因が影響を与えて出現する。BPSDの出現は認知症の方を介護する人たちにとって大きな負担となる事が多く、出来るだけ少ない状態で生活できることが望ましい。
治療に関しては生命予後や副作用の問題から非薬物療法が望ましいが、それでは改善が得られない場合、家族の疲弊などが激しい場合は薬物療法も行う。
今回は視覚消失後に物とられ妄想、被害妄想が出現し、家族も施設職員も継続介護が困難と思われたが、少量の非定型抗精神病薬で症状が消失し、家族も以前の関係を取り戻した症例を提示する。BPSDと考えてよいのか、他の精神疾患であるのか、またこのような治療が奏効したことにつきそれぞれの専門診療科の先生方の見解などをいただき、勉強したいと考える。

「FTDの臨床研究を通じて見えてくるもの ~ADモデルのその先に~」

東京慈恵会医科大学附属病院 精神神経科診療医長 品川俊一郎 先生

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前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia:FTD)は前頭葉と側頭葉前方部に病変の首座を有する神経変性疾患群であり、様々な概念の変遷を経て、現在はbvFTD、svPPA、nfvPPAの3つの臨床症候群を包括する概念となった。FTDは臨床的にも組織病理学的にも多様な背景を有する疾患群であり、臨床的にも行動症状のみなず、言語症状や運動症状が出現する。
また本邦を含む東アジアと欧米ではその遺伝的な背景も異なる。 このような多様性により、バイオマーカーの開発が困難であるため、依然として病初期からの臨床症状を正確に把握することが診断においては重要である。 特定の遺伝型(C9ORF72変異)においてはこれまで存在しないといわれてきた精神病症状が出現することも報告されており、精神疾患や他の変性疾患と誤診されることも多い。
FTDは蛋白-病理-形態-症候というADモデルを適応できない疾患群であり、それゆえ行動変容のメカニズム、治療的アプローチを考える上で興味深い。若年発症例が多く、その行動症状のため家族と社会の負担も大きく、それに比して依然として認知度が低い。精神科医と神経内科医とが協力して治療とケアを開発していかければならない疾患である。

【世話人会(敬称略、五十音順)】

代表世話人
・内門 大丈
・馬場 康彦
世話人
・井上 祥
・水間 敦士

【顧問(敬称略、五十音順)】

・小阪 憲司(横浜市立大学 名誉教授)
・繁田 雅弘(首都大学東京 健康福祉学部 作業療法学科 教授)
・瀧澤 俊也(東海大学医学部 内科学系神経内科学 主任教授)
・平安 良雄(横浜市立大学 精神医学 主任教授)
・水間 正澄(昭和大学医学部 リハビリテーション医学講座 主任教授)
・村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター 神経内科 部長)

【N-Pネットワーク研究会2015autumn共催会社】

・エーザイ(株)