第37回N-Pネットワーク研究会

2023年 12月5日 (火) 19:00~20:20 形式:WEB開催 AP横浜 Eルームより配信

一般講演

座長:馬場 康彦 先生 昭和大学藤が丘病院 脳神経内科 准教授 診療科⾧


注意欠陥多動障害と治療戦略

村尾 朋彦 先生

医療法人社団静和会 ゆたかクリニック

第37回N-Pネットワーク研究会

本邦では、DSM-Ⅳが1994年に発表されてからしばらく経過した1990年半ばに、注意欠陥多動障害(ADHD)が少しずつ認知されるようになった。かつては、思春期までに軽快する小児期の障害と考えられていたが、現在は成人期まで症状が長期にわたり持続することのある障害であることが明らかになっている。ADHDと診断された成人は、家庭、学校、職場、コミュニティでさまざまな困難を経験し、時には、触法行為に至ることもある。従って、適切なアセスメントと診断が治療者に求められる。生物学的病態においては、ドパミン作動ニューロンによる回路および、ノルエピネフリン伝達系回路を理解することが大切である。ADHDの治療は、心理社会的治療と薬物療法が治療の大きな柱となる。成人のADHDに対する治療薬にはメチルフェニデートやアトモキセチン、グアンファシンがあり、グアンファシンはカテコラミントランスポーターへの親和性がなく、α2Aアドレナリンに対する選択的作動薬という点で、ユニークな薬理学的プロファイルを持っている。今回は、ライフコースに沿った臨床症状とその経過、病態生理から、グアンファシンの奏功した症例について概説する。

特別講演

座長:内門 大丈 先生 医療法人社団彰耀会メモリーケアクリニック湘南院⾧


自閉症中核症状に対する初の治療薬を開発する取り組み:マルチモーダル脳画像解析、客観定量的行動解析、多層オミクス解析の応用

山末 英典 先生

浜松医科大学医学部 精神医学講座 教授

第37回N-Pネットワーク研究会

自閉スペクトラム症(Autism spectrum disorder: ASD)は、最新の統計では50人に1人を超える頻度で認められる神経発達症で、相互的な対人交流やコミュニケーションの困難、そして興味関心の限局と反復的常同的行動様式などの中核症状のために、幼少期から日常生活や社会生活に深刻や制約を生じる。ASDについての臨床の現状は、易刺激性や不安抑うつなどの併発する2次的精神症状に対しては対症的に薬物療法を行うが、中核症状そのものに対する治療薬は無く、中核症状については特性としての理解を本人や周囲に求めて特性に合った対処法を身につけることで適応を獲得していくことが主体となっている。
こうした状況の中、演者らは、脳機能や脳代謝情報を検討するマルチモーダル脳画像解析(JAMA psychiatry 2014;Brain 2014; 2015; Molecular Psychiatry 2015; 2021など)や表情・視線・発話特徴など対人行動の客観定量化(Brain 2019; 2022; Molecular Psychiatry 2020)あるいはPharmacogenomics(SCAN 2017; Molecular Autism 2021)を活用しながら複数の臨床試験を行い、オキシトシン経鼻剤を初のASD中核症状治療薬とするべく開発に取り組んできた。本講演ではこれらの研究成果について出来るだけ最新のものまで概説し、さらにASD中核症状治療薬開発についての今後の展望についても述べたい。

NPネットワーク研究会 世話人 (敬称略 50音順)

【世話人一覧】

共同代表世話人
・内門 大丈(メモリーケアクリニック湘南)
・馬場 康彦(昭和大学藤が丘病院 脳神経内科)
副代表世話人
・井上 祥 (株式会社メディカルノート)
・水間 敦士(東海大学医学部内科学系神経内科学)
世話人
・笠貫 浩史(聖マリアンナ医科大学)
・川口 千佳子(せやクリニック)
・野本 宗孝(横浜市立大学医学部 精神医学教室)
・日暮 雅一(ほどがや脳神経外科クリニック 院長)
世話人兼・会計監査
・秦 光一郎 (株式会社メドベース)
・竹中 一真(株式会社メドベース)
顧問
・繁田 雅弘(東京慈恵会医科大学 精神医学講座 主任教授)
・瀧澤 俊也(神奈川リハビリテーション病院 脳神経センター長)
・菱本 明豊(神戸大学大学院医学研究科 精神医学分野 主任教授)
・水間 正澄(昭和大学 名誉教授)
・村山 繁雄(大阪大学非常勤特任教授)
名誉顧問
・小阪 憲司 (横浜市立大学 名誉教授)
【第37回N-Pネットワーク共催会社】
・武田薬品工業株式会社