第3回N-Pネットワーク研究会

2015年6月19日(金) @ ホテルモントレ横浜

「パーキンソン病における衝動制御障害について」

東海大学医学部 内科学系神経内科学 准教授 馬場康彦先生

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衝動制御障害(ICD)には病的賭博,病的放火(放火癖),病的窃盗(盗癖), 抜毛癖,強迫的素行障害があり,習慣および衝動の障害として分類される.一 方,パーキンソン病(PD)ではドパミン補充療法に関連してドパミン調節異 常症候群(DDS)の合併がときに認められ,DDS 合併 PD では薬物を貯めこ み,必要量以上のドパミン補充薬を渇望し内服することや,常同行動,過食, 性的欲求の亢進,病的賭博,買いあさりなどの ICD が認められる.今回提示 する男性の PD 例ではドパミン補充薬による治療開始後から薬物の過量内服が 見受けられ,その後,様々な ICD を合併したため社会生活において多大な影 響が認められた.ICD/DDS の誘因としてドパミン補充療法の関与が示唆され たため,薬物減量を目的として脳深部刺激療法を施行した.術後,薬剤は著明 に減量されドパミン補充薬の渇望は消失したものの,ICD は残存した.ICD の 治療目的で精神科病院の閉鎖病棟に入院し,社会復帰を目指したが,ICD は改 善されることなく経過した.ICD もしくは PD に合併する ICD/DDS について 考察を加え,精神神経科や脳神経外科など様々な専門診療科とともに,その予 防や治療についての議論を行い,疾患の理解を深めたいと考える.

「本邦における behavioral variant of frontotemporal dementiaの臨床病理像」

JA とりで総合医療センター 神経内科 小林禅 先生

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【目的】
本邦における behavioral variant of frontotemporal dementia(bvFTD)症例の臨床病理像を明らかにする。
【方法】
臨床的に bvFTD と診断され、剖検にて前頭側頭葉変性症 (frontotemporal lober degeneration:FTLD)と診断された 35 例を検討した。臨 床所見は、2011 年に発表された診断基準(Brain 134:2456-77,2011)をもと に A.行動の脱抑制、B.無気力または無関心、C.共感または感情移入の欠如、 D.保続的、常同的、または強迫的行動、E.口唇傾向や食事の変化、の 5 症候に 着目し、その有無を症例ごとに検討した。病理診断は免疫組織化学的検討によ り FTLD-tau, FTLD-TDP, FTLD-FUS に分類した。
【結果】
病理診断は FTLD-tau が 13 例(ピック病が 11 例、皮質基底核変性症が 1 例、分類不能が 1 例)、FTLD-TDP が 14 例(typeA が 3 例、typeB が 7 例、typeC が 4 例)、 FTLD-FUS が 8 例(basophilic inclusion body disease[BIBD]が 5 例、neuronal intermediate filament inclusion disease[NIFID]が 1 例、atypical FTLD-U[aFTLD-U]が 1 例、分類不能が 1 例)であった。発症年齢は FTLD-tau が 40-76 歳(平均 56.4 歳)、FTLD-TDP が 39-64 歳(平均 54.1 歳)、FTLD-FUS が 29-57 歳(平均 40.9 歳)であり、FTLD-FUS で若年発症の傾向がみられた。 経過中、下位運動ニューロン徴候を示した例は 35 例中 7 例で、7 例中 6 例は FTLD-TDP であった。臨床所見の検討では、症候 A は全病理型で高頻度にみ られ、症候 B は FTLD-tau で特に頻度が低く(13 例中 4 例)、症候 C は FTLD-tau で特に頻度が高く(13 例中 7 例)、症候 D、E では FTLD-TDP で頻度が低か った(それぞれ 13 例中 4 例、0 例)。
【結論】
bvFTD 症例では一般に背景病理の推定が困難とされているが、臨床像の詳細に注目すると、背景病理ごとに一 定の特徴が存在した。FTLD-FUS は FTLD 全体の 1 割程度の稀な病理型とさ れているが、bvFTD 症例に限定した今回の検討では約 2 割が FTLD-FUS であ った。

【世話人会(敬称略、五十音順)】

代表世話人
・内門 大丈
・馬場 康彦
世話人
・井上 祥
・水間 敦士

【顧問(敬称略、五十音順)】

・小阪 憲司(横浜市立大学 名誉教授)
・繁田 雅弘(首都大学東京 健康福祉学部 作業療法学科 教授)
・瀧澤 俊也(東海大学医学部 内科学系神経内科学 主任教授)
・平安 良雄(横浜市立大学 精神医学 主任教授)
・水間 正澄(昭和大学医学部 リハビリテーション医学講座 主任教授)
・村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター 神経内科 部長)

【N-P ネットワーク研究会 2016summer 共催会社】

・ノバルティスファーマ(株)