第1回N-Pネットワーク研究会

2014年12月2日(火) @ 横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ

FTLDの精神神経症状とその対応について 〜自験例の報告〜

東海大学医学部 内科学系神経内科学 水間 敦士先生

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 前頭側頭変性症(frontotemporal lobar degeneration:FTLD)は1998年に前頭葉、側頭葉に原発性の変性を有する非Alzheimer型認知症性疾患に対してNearyらが提唱した包括概念であり、前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia:FTD)、原発性進行性失語症(primary progressive aphasia:PPA)に分類される。
症例は72歳男性、進行性の失語症状で来院された。頭部MRIで左前頭側頭葉の萎縮を認め、FTLDと診断した。高次脳機能障害としては失語症のみを呈し、PPAに分類された。PPAの分類として進行性非流暢性失語(progressive nonfluent aphasia:PNFA)、意味性認知症(semantic dementia:SD)の2亜型が提唱されてきた。本症例では自発言語は流暢型で喚語困難と音韻性錯語が目立ち、言語理解は保たれており他に記銘力低下も見られなかったことより、PPAの第3の亜型として提唱されているLogopenic 型のprogressive aphasiaと診断した。
精神神経症状の増悪に伴い、自宅療養が困難となり症状緩和のための内服調整および療養環境の調整に苦慮した症例であり、discussionのテーマとして提示した。

皮質基底核症候群と診断した1症例

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大脳皮質基底核変性症(corticobasal degeneration: CBD)は、1968年にRebeizらにより臨床病理学的に独立した神経変性疾患として報告された。1985年以降は、臨床所見、病理所見、タウ蛋白の生化学的所見が報告され、CBDは一疾患単位として確立した。しかし、CBDの臨床像は多彩であり、CBD以外のさまざまな疾患がCBDに類似した臨床像を呈することも分かってきた。現在では、CBDは病理診断名として用い、臨床診断名はcorticobasal syndrome(CBS)として前頭側頭葉変性症 (frontotemporal degeneration: FTLD)に含めて用いられることが多い。
症例は63歳女性で、臨床経過として言語障害で始まり、前頭葉機能障害を含めた認知機能障害を認め、経過とともに考え無精・常同的周遊・食事嗜好の変化・自発性低下など前頭側頭葉変性症(FTLD)にみられる症状を呈していた。当初、FTLDのbehavioural variant of frontotemporal dementia(bv FTD)と診断したが、その後の臨床経過および追加で行った18F-FDG-PET画像検査の結果を含めて、最終的にはCBSと診断した。
今回はDiscussionのテーマとして、本症例を通じて実臨床におけるCBSの診断の位置づけについて検討したい。また、臨床診断でCBDが最も疑われた場合に、病名告知のタイミングや特定疾患の申請など、実際にはどのように行われているのか、当研究会にてご意見をいただきたい。

レビー小体病とうつ ~認知症と睡眠障害の最新の知見を含めて~

名古屋大学大学院医学系研究科睡眠医学講座 藤城 弘樹

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レビー小体病は、パーキンソン症状、幻覚妄想、レム睡眠行動障害を呈する精神神経疾患である。各症状が前景化し、神経内科、精神科、睡眠科の各診療科に受診することによって、パーキンソン病、レビー小体型認知症、特発性レム睡眠行動障害と臨床診断される。しかし、病期の進行によって、各臨床症状は重複し、病理学的に連続性を示す。各診療科は、遭遇する機会の多い主要症状に精通する一方で、中途から出現する症状は苦手になる傾向がある。そのため、各臨床症状が前景化しない場合、臨床診断に難渋することが想像される。臨床診断と病理診断によるレビー小体病の発症頻度の乖離は、病像の多様性に起因するのかもしれない。
レビー小体病において「うつ」は高頻度に認めるとされる。各診療科の対象患者の呈する「うつ」の病像は異なる可能性があるが、「うつ」を生じる病態は共通する。神経画像の発達や病態の解明に伴い、各診療科が共通の評価方法を用いて議論できる環境が整備されてきている。レビー小体病の精神症状と神経症状が共通の病理学的背景によって生じていることから、各診療科が連携することで、臨床診断の向上だけでなく、治療方法の工夫も期待される。

【世話人会(敬称略、五十音順)】

代表世話人
・内門 大丈
・馬場 康彦
世話人
・井上 祥
・水間 敦士

【顧問(敬称略、五十音順)】

・小阪 憲司(横浜市立大学 名誉教授)
・繁田 雅弘(首都大学東京 健康福祉学部 作業療法学科 教授)
・瀧澤 俊也(東海大学医学部 内科学系神経内科学 主任教授)
・平安 良雄(横浜市立大学 精神医学 主任教授)
・水間 正澄(昭和大学医学部 リハビリテーション医学講座 主任教授)
・村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター 神経内科 部長)

【N-P ネットワーク研究会 2016summer 共催会社】

・武田薬品工業株式会社