第7回N-Pネットワーク研究会
2016年6月14日(火) @ ホテルモントレ横浜
2016年6月14日(火) @ ホテルモントレ横浜
65 歳以上の高齢者ではてんかんの有病率が増加する.高齢発症のてんかんの殆どが症候性部分てんかんとされているが,原因は不明なことが多い.発作も痙攣を伴わず意識変容や記憶障害のみの場合も多く,認知症と誤診される事もある. また,認知症とてんかんの合併についても十分に評価されていない場合が多い.高齢者への抗てんかん薬(antiepileptic drugs; AED)投与は,薬物代謝の低下や併存症の存在から慎重さが必要だが,その一方で高齢発症てんかんへの AED の反応性は良好で,かつ低用量で発作抑制できるといわれており必要があれば投与が検討されるべきと考える. 認知症と診断された対象者が,てんかんあるいはてんかんの合併と考えられる場合もある.認知症が疑われる高齢者には,より積極的にてんかんの鑑別を行い,認めた場合には AED の治療効果の評価が必要と考えられる.今回,probable DLB の診断基準を満たすが,発作間欠期の突発波(Interictal EpileptiformDischarge;IED)を認め,AED 治療に反応した 3 症例を経験したので,若干の考察を加え報告する.
日本は 2007 年に世界に先駆けて超高齢社会になり,それ以降も高齢者の割合は増加している.そのような中,認知症の高齢者も爆発的に増えつつあるのが現状である.厚生労働省研究班の調査の結果,2012 年の時点で認知症高齢者は約462万人と推察された. そこで問題となりつつあるのが認知症高齢者の摂食嚥下障害である.これまでの摂食嚥下リハビリテーション(嚥下リハ)は,どちらかというと脳卒中の回復期の嚥下障害を中心にして発展してきた.脳卒中回復期の基本は,誤嚥性肺炎を起こすことなく,機能の廃用を防止し,全身の回復とともに嚥下機能の回復を待つという方針である. そこでは「訓練・機能回復」という考えが中心にあり,そこでさまざまなエビデンスが出され,嚥下リハのさまざまな知識や技術が生まれてきた.その結果,嚥下リハは目覚ましい進歩を遂げ,学問の基礎を確立したともいえる. 一方,認知症は慢性経過をたどる進行性疾患である.すなわち,一部機能回復が図れる部分もあるが,多くは「慢性期=回復が頭打ち」であり,それどころか進行性疾患であるが故,徐々に機能低下を生じる.そういった病態の大きな流れを把握せずに,目先の症状だけをみて訓練・機能回復を目指すと,患者本人だけでなく,介助者や医療者も消耗し,無力感を味わうことになる. 認知症のリハは,機能の回復ではなく,機能低下を防ぐこと,および今ある機能を活かして生活の質を改善することに重きが置かれる.嚥下リハでいうと,代償的な嚥下方法といわれる食事内容の工夫などの「食支援」がメインとなる.要するに,脳卒中回復期の嚥下リハは「キュア=訓練で治す」という治療戦略であるのに対し,認知症の嚥下リハは「ケア=今の機能を最大限に活用できるよう支援する」という発想の転換が必要となる. 今回の教育講演では認知症を原因疾患別に分けて,特にアルツハイマー型とレビー小体型における摂食嚥下障害の特徴と対処法を解説する予定である.講演を機に認知症の摂食嚥下障害に興味を持って頂き,先生方が「嚥下難民」といわれる認知症高齢者の食の支えとなって頂ければ幸甚である.
代表世話人
・内門 大丈
・馬場 康彦
世話人
・井上 祥
・水間 敦士
・小阪 憲司(横浜市立大学 名誉教授)
・繁田 雅弘(首都大学東京 健康福祉学部 作業療法学科 教授)
・瀧澤 俊也(東海大学医学部 内科学系神経内科学 主任教授)
・平安 良雄(横浜市立大学 精神医学 主任教授)
・水間 正澄(昭和大学 名誉教授)
・村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター 神経内科 部長)
・ノバルティスファーマ(株)