第44回N-Pネットワーク研究会

2025年9月5日(金)19:00~20:20
ホテルプラム 4階「サロン・ド・エティンセル」

【特別講演Ⅰ】 19:00〜19:40

座長:横浜市立大学付属病院 精神科 部長補佐/講師 野本 宗孝 先生


抗アミロイド抗体薬を見据えた認知症診療

岩田 智則 先生

医療法人社団NALU えびな脳神経クリニック 院長

第44回N-Pネットワーク研究会

当院は、神奈川県より認知症疾患医療センターとして認可を受け、日常診療を行なって いる。本講演では、抗アミロイド β 抗体薬の登場による認知症診療のパラダイムシフ ト、実臨床でのドナネマブの院内運用と地域連携の実際、ドナネマブの最新の臨床試験と 自験例についてそれぞれ概説する。
近年、当院における認知症患者数が大幅に増加し、抗アミロイド β 抗体薬の導入症例 も徐々に増加している。抗アミロイド β 抗体薬は、従来の症状改善薬とは異なり、アル ツハイマー型認知症の病態そのものにアプローチする疾患修飾薬としての役割を期待され ており、早期診断・早期介入の重要性がより一層高まっている。
ドナネマブは、4 週 1 回投与や体重換算不要、治療期間の目処が明確など、患者・介護 者・医療スタッフの負担軽減に寄与する可能性があり、実臨床においても治療ゴールの可 視化や患者・家族の治療継続のモチベーション維持にもつながっている。さらに、治療の 初期導入から継続投与・諸検査を含めたフォローまで、大学病院や地域基幹病院や脳神経 クリニックや一般医家との連携体制を強化している。また自施設のみならず他施設のメデ ィカルスタッフと、新たな治療に関する情報共有を積極的に行い、切れ目のない診療を実 現するよう努めている。
ドナネマブの新たな知見が AAIC(Alzheimer’s Association International Conference)2025 で複 数発表された。最初の 3 ヶ月の初期投与法を漸増法に変更することで、ARIA-E が少なく なる臨床研究が報告された。加えて 18 ヶ月以上の長期投与による臨床転帰の有効性に関 するエビデンスも報告された。また当院における 20 症例のデータを供覧し、自験例に関 する具体的なデータの発表を行った。また看護師の工夫や実臨床における意見も紹介し、 現場での課題や今後の展望についても言及を行った。
治療選択肢の多様化、地域連携、患者・家族・医療者の「生きがい」を支える医療の実 現など、現場で解決すべき課題が山積しているのが現状である。抗アミロイド β 抗体薬 に関する最新の最適使用推進ガイドラインでの Inclusion criteria を踏まえ、患者・家族へ の適切な共同意思決定支援(Shared Decision Making)を行うことにより、将来的に多く の患者が恩恵を受ける時代が来ることを期待する。

【特別講演Ⅱ】 19:40〜20:20

座長:医療法人社団彰耀会 メモリーケアクリニック湘南 院長 内門 大丈 先生


神奈川県における認知症予防研究と実践活動

小田原 俊成 先生

横浜市立大学保健管理センター センター長・教授

第44回N-Pネットワーク研究会

近年、抗アミロイド β 抗体治療(レカネマブ、ドナネマブ)の保険適用によって認知 症診療は大きく変容しており、中でも軽度認知障害(MCI)への診断と介入の重要性が高 まっています。
アルツハイマー病の治療薬が新たに開発される一方、WHO より様々な認知症のリスク因 子が示されており、本講演では個人で出来る認知症予防活動をご紹介します。 特に運動の効果は広く認められており、身体活動量の増加は脳アミロイド β 蓄積量の減 少と相関することも最新の研究で分かって来ています。 わが国初の大規模多因子介入による認知症予防研究(J-MINT 研究)の神奈川版である 「J-MINT PRIME 神奈川モデル」では、生活習慣病を有する高齢者に対する多因子介入を 実施しました。 その結果とともに、その後の神奈川県にいて実施中の観察研究および認知症予防の社会実 装の取り組みについて報告します。
2022 年に発表された地域在住高齢者における認知症の有病率調査では、2012 年調査より MCI から認知症へ進展した割合が低下した可能性が示唆されており、今後も予防活動の効 果が期待されています。 認知症予防には、生活習慣の改善、社会的つながりの維持、感覚機能の補填、運動習慣の 定着が重要であり、地域資源を活用した継続的な支援体制の構築が求められます。

NPネットワーク研究会 世話人 (敬称略 50音順)

【世話人一覧】

共同代表世話人
・内門 大丈(メモリーケアクリニック湘南)
・馬場 康彦(福岡大学医学部 脳神経内科学 主任教授)
副代表世話人
・井上 祥 (横浜市立大学 共創イノベーションセンター 特任准教授)
・水間 敦士(東海大学医学部内科学系神経内科学 准教授)
世話人
・笠貫 浩史(聖マリアンナ医科大学 神経精神科学教室 教授)
・野本 宗孝(横浜市立大学医学部 精神医学教室 講師)
・日暮 雅一(ほどがや脳神経外科クリニック 院長)
世話人兼・会計監査
・秦 光一郎(株式会社メドベース)
・竹中 一真(株式会社メドベース)
顧問
・浅見 剛(横浜市立大学医学部 精神医学教室 教授)
・小田原 俊成 先生(横浜市立大学精神医学教室 保健管理センター長)
・繁田 雅弘(東京慈恵会医科大学 名誉教授)
・高橋 雅道(東海大学医学部 脳神経外科 領域主任教授)
・瀧澤 俊也(神奈川リハビリテーション病院 脳神経センター長)
・菱本 明豊(神戸大学大学院医学研究科 精神医学分野 主任教授)
・水間 正澄(昭和大学 名誉教授)
・村山 繁雄(大阪大学非常勤特任教授)
名誉顧問
・小阪 憲司 (横浜市立大学 名誉教授)
【第44回N-Pネットワーク共催会社】
・日本イーライリリー株式会社