第27回N-Pネットワーク研究会
2021年6月8日(火) 形式:WEB開催
2021年6月8日(火) 形式:WEB開催
日本医科大学 脳神経内科
2013 年日本の認知症患者は 462 万人、軽度認知障害も 400 万人と推定され、65 歳 以上の 4 人に 1 人が認知症かその予備軍であるということがわかった。認知症の原因 疾患は、1 位がアルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)、2 位が脳血管性認知症 で、前者は変性疾患、後者は動脈硬化の関与する病態で、両者は全く発症機序が異 なると考えられていたが、昨今の複数の大規模な疫学調査から、糖尿病をはじめとす る生活習慣病の中には AD の病理過程自体を促進するなど、いくつかの機序をもって 危険因子となり得ると言うことが明らかになった。
一方、心房細動は日本で 71.6 万(2005 年)と報告され、2050 年には 103 万人まで増 加し人口の 1.09%を占めると推定されているが、心房細動も同様に血管性認知症だけ でなく AD のリスクとなることがわかっている。そのメカニズムは、発作性心房細動と持 続性心房細動の病理学的な違いに関する報告からも徐々に明らかにされており、長 期間の心房細動による心拍出量の低下が脳低潅流を介して、AD 病理を加速してい ると考えられている。こうした観点から、認知症に対して、今や早期発見と早期治療介 入はもちろんのこと、一次予防に主眼をおいたアプローチが注目されている。実際近 年欧米からは認知症の有病率が減少していることが報告され、これは生活習慣病へ の介入と教育歴の充実が関与しているといわれている。
本講演では、心房細動と認知症との関係について、これまでの疫学調査の結果を中 心にレビューし、認知症予防の可能性についても考察する。
公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院 神経センター脳神経内科
近年、高齢者てんかんの有病率が上昇している。特に脳卒中、外傷、脳炎や髄膜炎などの 既往のある高齢者においてはてんかん発症リスクが高いとされているが、変性性認知症に おいても非痙攣性のてんかん発作が高頻度に見られることが注目されている。特にアルツ ハイマー病においては海馬のアミロイドの蓄積やタウ、TDP-43 蛋白の凝集が起こり、病 理学的にも海馬硬化を呈する。海馬硬化そのものは内側側頭葉に比較的限局したてんかん の焦点となりやすく、非痙攣性のため、てんかん発作として気づかれないものも多い。 明らかな痙攣がなくとも一点凝視、口元の不随意な動き、生返事、発作エピソード記憶の 脱落などを確認する問診を行い、介護者に発作のビデオ動画を携帯等で撮影してもらい、 外来時に発作を確認することが脳波、画像検査以上に重要である。
DLB や FTLD においてもてんかん発作は有意に生じやすいことも注意が必要である。
高齢者はてんかんだけでなくせん妄や失神などの意識障害のしばしばきたすので、鑑別が 困難な場合も多い。本公講演では変性性認知症においても、なぜてんかんが発症しやすい のか、自験例を中心に解説する。さらに新規抗てんかん薬の高齢者てんかんに対する有用 性のエビデンスについても解説したい。
共同代表世話人
・内門 大丈(湘南いなほクリニック)
・馬場 康彦(昭和大学藤が丘病院 脳神経内科)
副代表世話人
・井上 祥 (株式会社メディカルノート)
・水間 敦士(東海大学医学部内科学系神経内科学)
世話人
・笠貫 浩史(聖マリアンナ医科大学)
・川口 千佳子(せやクリニック)
・杉谷 雅人(総合相模更生病院 脳神経外科)
・野本 宗孝(横浜市立大学附属市民総合医療センター 精神医療センター)
世話人兼・会計監査
・加藤 博明(株式会社メドベース)
・竹中 一真(株式会社メドベース)
顧問
・小阪 憲司(横浜市立大学 名誉教授)
・繁田 雅弘(東京慈恵会医科大学 精神医学講座 主任教授)
・瀧澤 俊也(東海大学医学部付属大磯病院 神経内科 特任教授)
・菱本 明豊(横浜市立大学大学院医学研究科 精神医学部門 主任教授)
・水間 正澄(昭和大学 名誉教授)
・村山 繁雄(大阪大学非常勤特任教授)
【第27回N-Pネットワーク共催会社】
・第一三共株式会社