第24回N-Pネットワーク研究会
2020年9月8日(火) @ 形式:リモート開催 使用ソフトウェアzoom
(配信会場:横浜ホテルプラム)
2020年9月8日(火) @ 形式:リモート開催 使用ソフトウェアzoom
(配信会場:横浜ホテルプラム)
横浜市立大学附属市民総合医療センター 精神医療センター 部長
厚生労働省が公表した簡易生命年表より2017年の日本人の平均寿命が、女性87.26歳、男性81.09歳となることが明らかとなった。また介護を受けたりせずに日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」は2016年で女性74.79歳、男性72.14歳と算出されており、平均寿命と合わせて考えると男女とも約10年前後は介護を要する期間があることとなる。
また2010年には日本の総人口の23%が65歳を越えて超高齢社会を迎えている。人口の超高齢化により、総合病院における入院患者も高齢化が進んできた。そのため認知症を合併した身体疾患の患者が増加するとともに、入院経過中にせん妄をきたす患者数も増加している。それに伴いリエゾンチームの発足や入院患者の認知症スクリーニングの実施など、各病院とも超高齢化対策の導入を急いでいる。
横浜市立大学附属市民総合医療センター(以下当院)は横浜市南区に位置し、全756床を有する大学附属総合病院である。平成12年に新病棟が竣工し改称した。10部門の疾患医療センターと20の診療科があり、身体的な三次救急にも対応する高度救命救急センターが併設されている。
院内全体の入院患者動向を見てみると、平成12年の患者平均年齢(ただし母子医療センターと小児科は除く。以下同様)は54.8歳、平成29年は61.3歳となっており、17年間で6.5歳上昇している。また入院患者に占める70歳以上の患者割合は平成12年度が26.9%であったのが、平成29年度になると40.7%と大幅な上昇を示していた。
このような状況を受けて、当院においては2013年から専門のリエゾンチームを中心に認知症・せん妄対応を行っている。当日の講演では各診療科の病棟スタッフとの連携や薬物療法の実際について御紹介したい。
また病院全体の入院患者が高齢化している点を鑑みて、当院では身体疾患治療をサポートする専門対策チームの充実をはかっている。例を挙げれば、褥瘡対策チーム、栄養対策チーム、嚥下機能評価チーム、精神科リエゾンチーム、緩和ケアチームがありそれぞれ各科からの依頼に対応している。またその他にも転倒対策や深部静脈血栓症対策として当科では入院時一律にリスク評価を行っており、安全対策をすすめている現状がある。今後も多職種連携チームによる診療サポートの重要性は増していくものと考えられる。
筑波大学大学院人間総合科学研究科 教授
「サルコペニア」は加齢に伴う骨格筋量減少および筋力低下を兼ね備えた状態と定義される。本邦地域在住高齢者におけるサルコペニア有病率は15%程度であり、この割合は加齢に伴い増加することが知られている。また、サルコペニアは加齢変化を基盤とすることから、様々な疾病患者が有していることが多く、リハビリテーションの主な対象となる回復期病院入院患者や外来患者などではその有病率はさらに高まる。サルコペニアは、転倒、骨折、入院、要介護、死亡など様々な有害健康転帰の発生に関係するだけでなく、リハビリテーションの治療成績にも影響することから、様々なセッティングにおいてサルコペニアのマネージメントが求められている。サルコペニア対策を目的に運動療法を行う際には、次の5点について留意する必要がある。
1. 適切な運動種目の選択
筋力増強を目的とした場合には、ある程度の負荷をかけたレジスタンス運動が有用であり、多くの研究によりその有用性が確認されている。ただし、転倒予防や日常生活活動動作の改善などまでを目標とした場合には、レジスタンス運動単独ではなくバランス運動や有酸素運動などを組み合わせたマルチコンポーネントプログラムが有用である。
2. 総実施時間の確保
運動プログラムの設定に際しては、1回あたりの運動時間、頻度、期間のそれぞれを設定する必要がある。しかし、それぞれをどのように設定するのかについて明確な推奨値はなく、それぞれを掛け合わせた総実施時間(1回あたりの時間×頻度×期間)が重要である。総実施時間を25時間以上に設定することで各種アウトカムの改善効果が得られやすくなる。
3. 仕事量の確保
レジスタンス運動実施に際しては、負荷量が着目される傾向にあるが、対象が高齢者である場合は負荷量のみならず反復回数も重要になる。筋力は仕事量(負荷量と反復回数を乗じた値)依存的に改善する傾向があり、低負荷量でも多反復な運動を実施することで筋力増強効果を期待することができる。
運動の継続
レジスタンス運動を実施することで筋力増強および骨格筋量増加効果が得られるが、この効果の持続は難しく比較的短期間の運動休止により消失する。各種有害健康転帰の予防のためには、運動の継続が重要であり、長期に渡って継続できるような運動指導が求められる。
4. たんぱく質摂取の併用
対象がフレイル・サルコペニア高齢者である場合には、運動療法単独ではなくたんぱく質摂取の併用を検討する必要がある。このような対象者は、日常的に十分なたんぱく質量を摂取できていないことが多く、このような場合には運動療法による効果が得られにくい。運動の効果を高めるためにも、たんぱく質摂取量を確保しながら、筋タンパク合成量を促進することが重要となる。
本講演では最新の知見を交えながら、これら5つの留意点を中心に解説する。
共同代表世話人
・内門 大丈(湘南いなほクリニック)
・馬場 康彦(昭和大学藤が丘病院 脳神経内科)
副代表世話人
・井上 祥 (株式会社メディカルノート)
・水間 敦士(東海大学医学部内科学系神経内科学)
世話人
・笠貫 浩史(聖マリアンナ医科大学)
・川口 千佳子(せやクリニック)
・杉谷 雅人(総合相模更生病院 脳神経外科)
・野本 宗孝(横浜市立大学附属市民総合医療センター 精神医療センター)
世話人兼・会計監査
・加藤 博明(株式会社メドベース)
・竹中 一真(株式会社メドベース)
顧問
・小阪 憲司(横浜市立大学 名誉教授)
・繁田 雅弘(東京慈恵会医科大学 精神医学講座 主任教授)
・瀧澤 俊也(東海大学医学部 内科学系神経内科学 主任教授)
・水間 正澄(昭和大学 名誉教授)
・村山 繁雄(大阪大学非常勤特任教授)
【第24回N-Pネットワーク共催会社】
・ヤンセンファーマ株式会社