第21回N-Pネットワーク研究会
2019年12月10日(火)@ ホテルモントレ横浜
2019年12月10日(火)@ ホテルモントレ横浜
市ケ尾病院 神経内科
近年、高齢者でてんかんの発症率・有病率が高いことが知られるようになった。これにより、これまでは認知症と誤診されていたような症例において適切な診断、治療が行われるケースが増えた。
2000年代に発売されたいわゆる新規抗てんかん薬は、重篤な副作用が少ない、薬物相互作用が無い、など高齢者におけるてんかんへの投与において好条件である特徴をもつ。
しかし問題点もある。旧来の薬と比較しはるかに高額な薬価であり、患者家族の自己負担も、国民医療費も増える。副作用が軽微なだけに適切な対処がとられず漫然と投与される。などである。
また、適切な診断・適切な投与量であれば良いが、てんかんの診断が不確かな例への投与、過剰な投与量と思われる症例、認知機能の低下や抑うつをきたしているが対応がとられていない症例、などが散見される。
高齢者てんかんにおけるてんかん診断、および抗てんかん薬の問題点について問題提起する。
東京医科歯科大学 統合研究機構 教授
横浜市立大学 特別教授 / コミュニケーション・デザイン・センター センター長
シンシナティ小児病院 オルガノイドセンター 副センター長
シンシナティ小児病院 消化器部門・発生生物学部門 准教授
ヒポクラテスの時代以降、約2500年にわたり医療は「Medicine for Disease」、つまり病を前提にして、検査・診断・治療を施す実践体系であった。しかし、生活習慣病や認知症などが中心を占める現代においては、生命を守ることと同等に、生活を、そして、人生と共にある医療の姿を考えなくてはならない状況が生じている。言い換えると、病院という「点」で医療行為を行ってきた時代から、学校・家庭・職場など衣食住環境の状況、家族・友人・同僚・上司部下などの人間関係、趣味や娯楽のような余暇の過ごし方など、「線」としての医療の側面を考える時代へとシフトが求められているといえないだろうか。
これからの医療は、「Medicine for Humanity」という理念を具体化するような実践体系の構築が必要になってくると思われる。患者としてのみならず、その人がその人らしく生きるということをサポートできるような医療の再構築が急務と考える。このためには、人々との接点となる生活の場でのタッチポイントの全てが、医療の実践対象になると予想する。つまり、ファッション、家具、空間設計、はたまた、不動産や旅行などが手段になり得る時代が到来する。薬や手術だけではない、あらゆる媒体が、新時代の医療となる。更にいえば、それらを利用する人びとの目線にたち、面倒くさい、つまらない、つらい、などを除外し、人々のアクティベーションを促すためのコミュニケーションの設計に研究の力点が移るといえないだろうか。
このような未来を予想し、私たちは世界で初めてとなる医科学研究機関内のクリエイティブ組織として、横浜市立大学先端医科学研究センター内に「コミュニケーション・デザイン・センター(YCU-CDC)」を2018年に設立した。このセンターでは、医療の中のコミュニケーション課題を探索し、それを解決する策を考案していくために、教育学者やグラフィックデザイナー、コピーライターなどの従来の医科学研究機関にはいない人財を採用し、活動を始めている。本講演では、私たちがYCU-CDCにて、精神科チームなど様々なスペシャリストたちと連携してきた、数々の実験的な取組を紹介するとともに、「コミュニケーション・デザイン」の専門家たち(クリエイター、アーティストなど)と協同することの重要性、並びにそこに派生する課題や、先行事例からみる未来の認知症医療の在り方について、ご来場の皆様と議論できれば幸いと考えている。
【共同代表世話人】
・内門 大丈(湘南いなほクリニック)
・馬場 康彦(昭和大学藤が丘病院 脳神経内科)
【副代表世話人】
・井上 祥 (株式会社メディカルノート)
・水間 敦士(東海大学医学部内科学系神経内科学)
【世話人】
・笠貫 浩史(順天堂東京江東高齢者医療センター)
・川口 千佳子(せやクリニック)
・杉谷 雅人(相模原協同病院 総合内科)
・野本 宗孝(横浜市立大学附属市民総合医療センター 精神医療センター)
【世話人兼・会計監査】
・加藤 博明(株式会社メドベース)
・竹中 一真(株式会社メドベース)
・小阪 憲司(横浜市立大学 名誉教授)
・繁田 雅弘(東京慈恵会医科大学 精神医学講座 主任教授)
・瀧澤 俊也(東海大学医学部 内科学系神経内科学 主任教授)
・水間 正澄(昭和大学 名誉教授)
・村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター 神経内科 部長)
・第一三共株式会社