第18回N-Pネットワーク研究会
2019年3月19日(火)@ ホテルモントレ横浜
2019年3月19日(火)@ ホテルモントレ横浜
1)順天堂大学医学部精神医学教室
2)順天堂東京江東高齢者医療センター メンタルクリニック
レビー小体病の代表的な臨床表現型はレビー小体型認知症とパーキンソン病である。英国の地域コホート剖検例検討結果からは、Braakステージ分類に定型的に則る典型症例は約半数に過ぎず、レビー病理の脳神経系内進展には多様性があることが示されている。演者は米国メイヨークリニック神経科学部門神経病理学教室(Dennis W. Dickson教授)に所属し、Mayo Brain bankに保管されるレビー小体病の神経病理学的検討を行う機会を得た。同bank中のびまん性レビー小体病脳523例のうち、11例が皮質基底核症候群の臨床経過を示し、うち4例ではレビー関連病理の特徴的分布そのものが臨床表現型を規定したものと思われた。この検討から、びまん性レビー小体型認知症のうちでも非定型的分布を示す症例の存在が示された。レビー小体病をはじめとする変性性認知症疾患における病理変化の部位特異性、そしてその亜型を決定する因子・機構は未だ解明されていないが、現時点では定型/非定型例の知見を蓄積することが重要であり、synuclein imaging実用化が到来した段階で診断パラダイムは一気に加速することが期待される。
神奈川歯科大学附属病院 認知症・高齢者総合内科
藤田医科大学 救急総合内科
新オレンジプランの理念の下、認知症診療に携わる医療者は、診療科の違いや医師、歯科医師、薬剤師、看護師といった職種の垣根を越えチームを組織し、その実践に努め始めている。理念の実践として素晴らしいことではあるが、現場、特に在宅医療を行っている診療科の医師からは、「認知症に関してはまだまだ熟知しておらず、手探り状態です。」といった率直な意見を聞く。日本認知症学会専門医あるいは日本老年精神医学会専門医の資格を有する在宅診療医は別として、多くの非神経内科、非老年精神科医師の認知症への理解度および対応能力はこうした意見からもその程度が推察され、まだまだ底上げが必要なレベルと言わざるを得ない。実際、演者の経験したケースは、こうした現状を端的に表すもので、概略を示す。
活動性の低下、拒薬および拒食といったBPSDを認める症例に関し、在宅往診医より症状の改善を目的とした紹介を受けたのであるが、このケースでは、幽門部に生じた胃癌が原因で上述の症状を呈していたことが診察の結果判った。医師であれば、食思不振という主訴に対し一般身体診察、血液生化学検査や画像診断を行いその原因を探索するのが常道であろう。本ケースの場合、認知症患者のBPSDによる活動性の低下と拒食に違いないという決め打ちの下に、どう対応すればよいか自信がないので取り敢えず専門医へ紹介しておこう。といった医師としての思考停止を起始に生じたエピソードと推察される。心情として理解は出来るものの、認知症だ、BPSDだと構える前に、基本的な診療姿勢をもって症状の発生因をアセスメントすることが大切であり、患者を俯瞰的に診る姿勢は、認知症医療であっても当然のこととして求められる。BPSDをneuro-transmittersの問題と即応的捉えるのではなく、並存する一般身体疾患、身体要因の影響を先ずは検討する姿勢を忘れてはならない。
本講演では、上記を踏まえ認知症性疾患に伴う多彩な病態を総合内科医の立場から考えると共に、歯科大学の教員の立場から歯科口腔からみる認知症性疾患についても話題を広げたく思う。
NP ネットワーク研究会 世話人 (敬称略 50 音順) 共同代表世話人
・内門 大丈 (湘南いなほクリニック)
・馬場 康彦 (昭和大学藤が丘病院 脳神経内科)
副代表世話人
・井上 祥 (株式会社メディカルノート)
・水間 敦士 (東海大学医学部内科学系神経内科学)
世話人
・川口 千佳子(せやクリニック)
・杉谷 雅人 (相模原協同病院 総合内科)
・野本 宗孝 (横浜市立大学附属市民総合医療センター 精神医療センター)
世話人兼・会計監査
・加藤 博明 (株式会社メドベース)
・竹中 一真 (株式会社メドベース)
・小阪 憲司 (横浜市立大学 名誉教授)
・繁田 雅弘 (東京慈恵会医科大学 精神医学講座 主任教授)
・瀧澤 俊也 (東海大学医学部 内科学系神経内科学 主任教授)
・平安 良雄 (横浜市立大学 名誉教授)
・水間 正澄 (昭和大学 名誉教授)
・村山 繁雄 (東京都健康長寿医療センター 神経内科 部長)
・エーザイ(株)