第16回N-Pネットワーク研究会
2018年9月11日(火) @ ホテルプラム
2018年9月11日(火) @ ホテルプラム
我が国は人口減少社会を迎え、増加が続く被介護者人口に対し、生産年齢人口の減少を反映して介護者人口は年々減少しています。そこで、家族の介護負担とサービス業としての介護業務の軽減を目指し、国内では様々な高齢者見守りセンサーやシステムの開発が進んでいます。本講座も見守りセンサーやシステムの開発に携わっています。認知症の行動変化はシステム開発の大きなテーマです。でも、製品はなかなか現場に出てきません。そこには多くの壁が存在します。いくつかの壁を紹介します。
認知症の行動変化を素早く捉えることは、早期介入を促して予後を改善させる可能性があります。また治療効果の判定にも役立つ可能性があります。人口減少社会の中で認知症治療を進めるには、チーム医療とセンサーやシステムの融合が欠かせません。一方で、監視社会でない見守り社会を作るには、製品開発と並行して多職種協働実践教育(IPE)の開発も必要です。開発現場は課題山積です。
聖徳太子が大阪四天王寺に寺院、薬局病院、社会福祉施設等を併せ持つ施設を創り、ドラッカーが著書『非営利組織の経営』の中で「最古の非営利組織(NPO)は日本にある。日本の寺は自治的だった。」と言及しているように、古くから寺院は地域福祉の一翼を担い、人々が抱える「生老病死」の苦悩に寄り添ってきた。認知症は現代的な課題ではあるが、「老病死」の要素が入り交じり、仏教の立場から向き合うべき問題ともいえよう。
では、認知症支援における寺院や僧侶の強みはどのようなところに見いだせるだろうか?それは、①高齢者との接点を既に持っている、②ごく自然に檀家宅に訪問することができるため認知症の早期発見や介入をしやすい、③寺院のスペースを活用して様々な福祉イベントを行える、④僧侶の傾聴力を活かして、悩みに寄り添うケアを行える、⑤僧侶が認知症(老病死)の苦悩に寄り添い共に時間を過ごせば、充実した終末期につながる、等の強みが考えられる。個々の寺院・僧侶は微力であったとしても、各教団のスケールメリットを活かせば一定の社会的インパクトをもたらせるのではないか。浄土真宗本願寺派の場合でいえば、全国で約1万の寺院、3万人の僧侶、700万人 の門徒(檀家)の規模である。
具体的な試行としては、僧侶と医療・介護専門職が連携して「おれんじテラス」という団体を結成し、各地の寺院を会場として認知症講座や茶話会を開催している。内容・特徴としては、座学(医学的知識)、実践(介護のロールプレイ)に加え、住職の法話や、参加者との交流を行う場合がある。これまでの受講者は僧侶や檀家などの寺院関係者だけでなく、むしろ地域の一般の方の方が多い。また、浄土宗においては介護疲れの方を支える「ケアラーズカフェ」を寺院で開催しており、弊派との連携を視野に情報交換を行なっているところである。
我々の最終的な目標は、認知症の疾病観を変えていくことである。世間には認知症に対する過度に悪いイメージがあるが、認知症と付き合いながら豊かな人生を送ることもできる、というイメージに転換していきたい。仏教が認知症の受け止め方を少しずつ変え、寺院・僧侶が認知症のご本人と介護者を支える取り組みを地域(専門職、行政含む)との連携の中で模索していきたい。
共同代表世話人
・内門 大丈(湘南いなほクリニック)
・馬場 康彦(昭和大学藤が丘病院 脳神経内科)
副代表世話人
・井上 祥 (株式会社メディカルノート)
・水間 敦士(東海大学医学部内科学系神経内科学)
・小阪 憲司(横浜市立大学 名誉教授)
・繁田 雅弘(東京慈恵会医科大学 精神医学講座 主任教授)
・瀧澤 俊也(東海大学医学部 内科学系神経内科学 主任教授)
・平安 良雄(横浜市立大学 名誉教授)
・水間 正澄(昭和大学 名誉教授)
・村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター 神経内科 部長)
・第一三共株式会社