第15回N-Pネットワーク研究会

2018年6月12日(火) @ ホテルプラム

『パーキンソン病の薬物療法~MAO-B阻害薬ラサギリンへの期待~』

昭和大学藤が丘病院 脳神経内科 准教授 馬場 康彦 先生

第15回N-Pネットワーク研究会

パーキンソン病(Parkinson’s disease, PD)は脳内のドパミン欠乏を原因として,安静時振戦,筋固縮,動作緩慢,姿勢反射障害,歩行障害などの運動症状があらわれる神経変性疾患である.薬物治療としてはドパミンの補充療法が中心であるが,疾患の長い経過において症状の緩和と高いADLの維持を図るためには薬剤の選択,投与量,投与方法などにおいて調整が必要となる.

PDの初期では薬物治療に対して一般的には良好な反応性を示すため,投与する薬剤も単剤であることが多く,比較的に少ない投与量で運動症状の改善を得ることが可能である.一方,病状の進行に伴う運動症状の悪化に対して,治療薬も徐々に投与量が増加し,多剤併用療法となることも少なくない.長期の薬物治療における問題点として,薬効が徐々に減少し運動症状の日内変動を示すウェアリングオフ現象や,治療薬に対してドパミン神経系の許容性が低下するために起こる不随意運動(ジスキネジア)などの出現が挙げられる.運動合併症はADLを低下させる主要な因子であるため,その発現を回避することは初期治療として重要である.また,進行期における運動合併症をいかに緩和するかも同時に求められる.

新規のMAO-B阻害薬であるラサギリンは病初期における運動症状の改善効果を示し,初期治療の第一選択薬である.また,薬効の低下・消失時における症状の悪化(オフ時間)に対する改善効果も非常に大きいことが証明されている.本講演ではラサギリンの臨床的特徴や神経保護作用の観点からの潜在性などについて概説する.

認知症訪問診療における地域連携の取り組み』

医療法人すずらん会 たろうクリニック 院長 内田 直樹 先生

第15回N-Pネットワーク研究会

人口構成の顕著な高齢化と社会保障費の増大、終末期をめぐる社会のニーズ等を背景に、入院医療、外来医療と並ぶ第三の医療として在宅医療が注目されています。しかし、在宅医療を提供する在宅療養支援診療所のうち精神科を標榜しているのは全体の4%の630カ所と少なく在宅医療を提供する精神科医療機関は非常に限られているのが現状です。一方、訪問診療を受ける患者のうち75歳以上が89.4%であり、対象の大部分を後期高齢者が占める在宅医療において認知症診療は重要な位置を占めています

医療法人すずらん会たろうクリニックは、平成21年5月に開業したはじめクリニックを前身として、平成22年12月に法人化しました。理事長、院長をはじめ精神科医が中心となって診療に取り組んでおり、認知症高齢者を中心に約750名に訪問診療を提供しています。

当院では認知症とともによりよく生きる街づくりを目指して5つの取り組みを行っています。精神科医が行う認知症訪問診療、見える事例検討会、認知症見立て研修会、ユマニチュード、ICTの活用について、というそれぞれの取り組みについてご紹介いたします。

参考文献:
「認知症の人に寄り添う在宅医療〜精神科医による新たな取り組み」  クリエイツかもがわ

【世話人会(敬称略、五十音順)】

共同代表世話人
・内門 大丈(湘南いなほクリニック)
・馬場 康彦(昭和大学藤が丘病院 脳神経内科)
副代表世話人
・井上 祥 (株式会社メディカルノート)
・水間 敦士(東海大学医学部内科学系神経内科学)

世話人
・川口 千佳子(せやクリニック)
・杉谷 雅人 (相模原協同病院 総合内科)
・野本 宗孝 (横浜市立大学附属市民総合医療センター 精神医療センター)
世話人兼・会計監査
・加藤 博明 (株式会社メドベース)
・竹中 一真 (株式会社メドベース)

【顧問(敬称略、五十音順)】

・小阪 憲司(横浜市立大学 名誉教授)
・繁田 雅弘(東京慈恵会医科大学 精神医学講座 主任教授)
・瀧澤 俊也(東海大学医学部 内科学系神経内科学 主任教授)
・平安 良雄(横浜市立大学 名誉教授)
・水間 正澄(昭和大学 名誉教授)
・村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター 神経内科 部長)

【第15回N-Pネットワーク研究会共催会社】

・武田薬品工業株式会社