第13回N-Pネットワーク研究会
2017年12月12日(火) @ ホテルモントレ横浜
2017年12月12日(火) @ ホテルモントレ横浜
身体表現性障害を呈した視神経脊髄炎の1例
高橋聖也①、増田祐友子①、黒川信二①、笠井英世①、市川博雄②、馬場康彦①
①昭和大学藤が丘病院 脳神経内科
②昭和大学藤が丘リハビリテーション病院
57歳女性。主訴は四肢異常感覚、嘔吐。近医神経内科受診し採血、頭部MRIが施行され異常なく精神疾患を疑い、精神科紹介となった。
精神科は精神的負因を認めること、症状が多彩で一元的に説明困難なことなどから身体表現性障害と診断、
抗不安薬、SNRIで加療を行った。加療後、疼痛は改善したが膀胱直腸障害が出現した。
当院神経内科に診察依頼があり、疼痛を伴う四肢弛緩性麻痺を認め、両側Babinski徴候が陽性だった。
頸髄MRIを施行し延髄下部から第1胸髄にかけて8椎体にわたる中心性の脊髄病変を認め視神経脊髄炎
スペクトラムディスオーダー(NMOSD)を疑い同日神経内科転科、抗AQP4抗体価を提出した。
抗AQP4抗体価は強陽性で測定限界を超えていた。
転科後直ちにステロイドパルス療法を施行したがCO2ナルコーシスによる意識障害を呈し人工呼吸器管理となった。
ステロイドパルスは不十分と判断し血漿交換に切り替え、途中から免疫抑制剤併用開始した。
血漿交換6回目から自発呼吸が出現し、頸髄MRIでも所見は改善した。
血漿交換前後で抗AQP4抗体価を測定したところ抗体価低下と共に症状は軽快し病勢と相関することに矛盾せず
抗AQP4抗体価が治療指標として有用と考えた。臨床でもNMOSDに対する血漿交換は保険と症状改善度合いで担当医の判断により回数を決めているのが現実である。
抗体価推移をみることがある程度の指標になるのか今後データの蓄積が必要である。
本症例のような精神疾患を疑われた症例でも当然のことだが身体疾患の除外をしなければならない。
NMOSDは重症化しやすく病状進行に伴い積極的な免疫療法や血漿交換が必要であると考えられた。
高齢者における認知症の原因として最も多いアルツハイマー病においては、細胞外にβアミロイドが凝集した老人斑が、
細胞内に過剰リン酸化タウタンパクが線維化した神経原線維変化が認められることが病理学的な特徴として知られている。
これらの異常蓄積タンパクは、物忘れなどの臨床症状が出現する15-20年ほど前にはすでに脳内に出現していると想定されており、
神経障害への密接な関与が疑われている。これらの異常蓄積タンパクは、
一般臨床で最もなじみ深い画像検査であるCT・MRI画像などでは確認することができないが、
近年これらの脳内病理変化を陽電子放射断層撮像法(positron emission tomography: PET)で可視化する、
神経病理画像の実用的な技術が登場してきた。
神経病理画像検査の登場により、認知症画像研究は過去に例をみない速さで進歩し続けているが、
実地臨床医の先生方にはどの程度なじみがある話題として受け止められているだろうか?
『研究の話で、実臨床には関係ない』、『PET検査などなくても、認知症の診断はできる』、
『根本治療法がないのに、早期診断だけをしても仕方がない』と思われている先生は、いまだに少なくないのではないか?
本講演では、神経病理画像の登場でもたらされた認知症画像研究の成果について概要を紹介する。
さらに最新の知見を踏まえた上で、実臨床における認知症診断の課題と近未来展望について考察し、
認知症早期診断の本質的な意義についても私見を語りたい。
代表世話人
・内門 大丈
・馬場 康彦
副代表世話人
・井上 祥
・水間 敦士
・小阪 憲司(横浜市立大学 名誉教授)
・繁田 雅弘(東京慈恵会医科大学 精神医学講座 主任教授)
・瀧澤 俊也(東海大学医学部 内科学系神経内科学 主任教授)
・平安 良雄(横浜市立大学 精神医学教室 主任教授)
・水間 正澄(昭和大学 名誉教授)
・村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター 神経内科 部長)
・エーザイ(株)